米国株投資の為替リスク、知っておきたい基本の考え方

米国株投資の為替リスク、知っておきたい基本の考え方 米国株・ETF

米国株や米国ETFに投資すると、株価の値動きに加えて円とドルの為替レートの変動も自分の資産に影響します。円安になれば円換算のリターンは押し上げられ、円高になれば逆に目減りする可能性があります。為替リスクをゼロにすることは難しいですが、仕組みを理解し、長期・積立・分散という基本を意識することで、必要以上に恐れずに付き合っていくことができます。

為替リスクとは何か、なぜ米国株投資に関係するのか

為替リスクとは、通貨(つうか。円やドルなど国ごとのお金の単位)の交換レートが変動することで、資産の価値が変わってしまうリスクのことです。私たちが米国株や米国ETF(上場投資信託。証券取引所で株式のように売買できる投資信託の一種)に投資するとき、実は2つの値動きが同時に発生しています。

1つ目は「株価そのものの値動き」です。企業の業績や市場全体の動向によって、ドル建ての株価が上下します。2つ目は「為替レートの値動き」です。私たちは最終的に円で生活しているため、ドル建ての資産を円に換算し直したときの価値が、為替レートの変化によって変わってしまうのです。

つまり、米国株や米国ETFに投資するということは、「米国企業の成長性への投資」と「ドルという通貨への投資」を同時に行っていることになります。この2つ目の要素が為替リスクであり、見落とされがちですが非常に重要なポイントです。

円安・円高が投資リターンに与える影響を具体例で考える

為替の影響をイメージしやすくするために、簡単な例で考えてみましょう。仮に、1ドル=140円のときに1,000ドル分の米国ETFを購入したとします。円換算での購入金額は14万円です。

その後、株価自体は変わらず1,000ドルのままだったとしても、為替レートが1ドル=150円の円安になっていれば、円換算の評価額は15万円に増えます。株価が動いていないのに、為替の変動だけで1万円分の含み益が生まれた計算になります。

逆に、為替レートが1ドル=130円の円高になっていた場合、円換算の評価額は13万円に減ってしまいます。株価は変わっていないのに、為替の変動だけで1万円分の含み損が生じることになるわけです。

このように、米国株投資のリターンは「株価の変動」と「為替の変動」の掛け合わせで決まります。株価が上昇していても、それを上回るペースで円高が進めば、円換算では損失になることもありますし、逆に株価が下落していても円安が進めば、円換算では利益が出ることもあります。この点は、投資を始める前にぜひ知っておきたい基本の考え方です。

為替ヘッジあり・なしの投資信託、どう違うのか

米国株や米国ETFに投資する投資信託の中には、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」という2つのタイプが存在します。ヘッジ(hedge。リスクを避けるための対策)ありの商品は、為替予約などの手法を使って為替変動の影響を抑える仕組みを取り入れています。一方、ヘッジなしの商品は、為替変動の影響をそのまま受ける設計になっています。

項目 為替ヘッジあり 為替ヘッジなし
為替変動の影響 抑えられる(完全に無くなるわけではない) そのまま受ける
円安局面での恩恵 受けにくい 受けやすい
円高局面での影響 受けにくい 受けやすい(下落要因になりうる)
コスト ヘッジコストが上乗せされる傾向 比較的低コストな傾向
値動きのわかりやすさ 株価の動きに近い値動き 株価と為替の複合的な値動き

ヘッジコストは、日本と米国の金利差などの影響を受けて変動する仕組みになっており、常に一定というわけではありません。金利差が大きい局面ではヘッジコストが高くなりやすいと一般的に言われています。どちらが優れているという単純な話ではなく、為替変動をできるだけ避けたいのか、それとも為替変動込みで運用していく方針なのかという、考え方の違いによって選択が分かれる部分です。

為替リスクを完全に避けることはできるのか

結論から言うと、為替リスクを完全にゼロにすることは現実的には難しいと考えられています。為替ヘッジをかければ為替変動の影響を抑えることはできますが、ヘッジには一定のコストがかかりますし、ヘッジの効果も100%完全というわけではありません。

また、そもそも日本円で生活し、将来も円で支出をしていく前提であれば、資産の一部を円建てではなく外貨建てで持つこと自体が、円だけに集中するリスクを分散させる効果を持つという考え方もあります。日本円の価値が将来にわたって安定し続ける保証はなく、外貨建て資産を持つことは、通貨の分散という観点でメリットになりうる面もあるのです。

つまり、為替リスクは「悪いもの」として一方的に避けるべき対象というよりも、「株式のリスクとは別に存在する、資産全体の値動きを左右する要因の一つ」として理解し、自分がどの程度受け入れられるかを考えることが大切だと言えます。

為替リスクとどう付き合うか、分散と時間分散の考え方

為替の動きは、金利・物価・各国の経済政策など、非常に多くの要因が絡み合って決まるものであり、専門家であっても将来の水準を正確に予測することは困難だとされています。そのため、短期的な為替の予想に基づいて売買のタイミングを計ろうとするのではなく、長期的な視点で付き合っていくという考え方が一般的に支持されています。

具体的な工夫としては、次のようなものが挙げられます。

  • 毎月一定額を積み立てる「時間分散」によって、購入時の為替レートを平準化する
  • 米国株・米国ETFだけでなく、日本株や全世界株など、投資対象の地域を分散させる
  • 為替ヘッジあり・なしの商品を組み合わせ、為替変動の影響度合いを自分で調整する
  • 短期的な円高・円安の動きに一喜一憂せず、長期の資産形成という目的を見失わない

特に積立投資は、購入のタイミングを分散させることで、たまたま円安が進んだ時期にまとめて購入してしまうリスクや、逆に円高のタイミングを逃してしまう焦りを軽減する効果が期待できるとされています。一括投資と積立投資のどちらが優れているかは相場環境次第の面もありますが、為替変動への心理的な負担を減らすという意味では、積立という手法にも一定の意義があると考えられています。

NISA口座で米国株・米国ETFに投資する場合の注意点

新NISA(少額投資非課税制度。一定額までの投資から得た利益が非課税になる制度)を使って米国株や米国ETF、あるいは米国株に投資する投資信託を購入する場合も、為替リスクの考え方自体は変わりません。NISAはあくまで「利益にかかる税金を非課税にする制度」であり、為替変動によって生じる損益そのものを保証したり、なくしたりする制度ではないという点は誤解しやすいポイントです。

また、NISAの成長投資枠・つみたて投資枠のどちらを使う場合でも、対象商品が為替ヘッジありかなしかによって値動きの性質が変わってくるため、目論見書(もくろみしょ。投資信託の内容を説明する公式資料)などで為替ヘッジの有無を確認しておくことが望ましいと言えます。非課税というメリットに気を取られて、商品性そのものの確認がおろそかにならないよう注意が必要です。

まとめ

米国株や米国ETFへの投資は、株価の値動きに加えて為替レートの変動という、もう一つの値動きの要因を抱えることになります。円安は円換算のリターンを押し上げ、円高は押し下げる方向に働くため、株価が良好でも為替次第で結果が変わりうるという点は基本として押さえておきたいところです。為替ヘッジあり・なしの商品にはそれぞれ特徴があり、どちらか一方が正解というものではありません。為替の将来を正確に予測することは難しいからこそ、長期投資・積立・分散といった基本を意識しながら、為替リスクと付き合っていく姿勢が大切だと言えるでしょう。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法律相談ではありません。具体的な税務手続きについては税理士、法律に関する事項は弁護士など、各専門家にご確認ください。制度内容は変更される場合があるため、最新情報は国税庁・金融庁等の公式情報もあわせてご確認ください。

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